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安全な食上げのポイント(前編)

国立国際医療研究センター病院 リハビリテーション科
診療科長  
藤谷 順子 先生

はじめに

 

 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(学会分類2021)は、以下の内容で構成されています。

・本文(概説・総論・学会分類2021(食事) ・学会分類2021(とろみ)・Q&A)・別紙早見表(食事・とろみ)

 内容としては、学会分類2013が基礎となっていますが、学会分類2013に対して新たな知見や会員のパブリックコメントを受け、2021年に改訂されたのが学会分類2021です。

 

 

 

 病院・施設などでは、学会分類、あるいはそれに類した分類を用いて食形態を決定していると推察されます。

食事を開始する際や食形態レベルを上げるための判断として、嚥下造影検査(以下VF:Videofluoroscopic examination of swallowing)や嚥下内視鏡検査(以下、VE:Videoendoscopic evaluation of swallowing)を用いる場合も多いと思います。

 しかし、それらの評価体制が、全ての病院・施設で整っているわけではありません。

 また、これらの機器を保有している病院・施設であっても頻回に検査を実施することは困難です。

 

 これらの事情から、多くの施設では臨床的な所見を基に食形態を判断する方法を必要としていることが考えられるため、実臨床での経験を基に「安全に食上げを行うためのポイント」について解説します。

 

 

食上げを判断する条件の例

 

 食上げを判断する際は、次のいずれかの条件を満たすことが多くあります。

 

【A】提供した食事をほぼ全量一定時間内に食べることができ、誤嚥のサインが確認されない場合

 初発脳卒中片麻痺など、咀嚼能力が残存し、嚥下機能低下も一時的なものである場合に該当します。

 各施設で基準は異なりますが、1食あたり15分~20分程度でほぼ全量食べることができ、6食(2日)通じて問題がないと判断された場合に食上げが可能と判断されることが一般的です。

 ただし、この方法は欠点もあります。

 例えば、咀嚼・嚥下機能は十分回復していても提供されたメニューや味付けが好みでない、とろみの粘度が強すぎて食べられないなど、咀嚼・嚥下機能以外の要因で食事摂取量が不十分となる場合もあります。

 評価者は、まず要因を正しく判断することが重要です。

 咀嚼・嚥下機能が原因であれば物性の再調整が必要となりますが、好みの問題で食べられていないのであれば味付けやメニューを変更する等、患者さんの食欲を誘う工夫が必要です。

 他にも患者さんが同じレベルの食形態で停滞している期間が長い場合、スムーズに進まない場合はこれまでと異なる視点の工夫を取り入れましょう。

 

【B】現在の食形態より1つ上の形態の食品を少量提供した際に、問題なく食べられる、かつ誤嚥のサインが無い場合

 臨床現場で多く取り入れられている方法です。

 食事は通常通り患者さんに適した物性を提供しつつ、評価者である言語聴覚士(ST)が行う訓練時間で、より硬い物性の摂取が可能かどうか観察し、評価していることが多いです。

 食品を摂る様子から臨床的所見を得るため、予め観察するポイントを整理しておく必要があります。

 

【C】VFもしくはVEを行い、その形態が問題なく摂食可能なことを確認した場合

 検査が行える環境であることが前提であるため、検査機器が無い病院・施設では対象外となります。

 また、検査機器を保有している病院・施設であっても食上げごとに必ず行う必要はありません。

 

 

 

現在の食形態の適正を判断するサイン

 

 臨床所見から、現在食べている食形態が適切かどうかを判断するポイントは次の通りです。

 

 1普段のとろみ水より粘度の低いとろみ水を提供する
 Check: 

 □ むせの有無 
 □ 声質の変化
 □ 呼吸の変化
 □ 痰の量が増加しないか
 □ 発熱しないか

 

 2普段の食事より1段階上の食形態レベルを提供する
 Check: 

 □ 口からの取り込みの様子と口唇閉鎖
 □ 咀嚼の様子(口唇や下顎の左右非対称な運動)
 □ 嚥下が起きるまでの時間 
 □ 嚥下の回数(追加嚥下)
 □ むせや声質の変化、呼吸の変化
 □ 残留の有無(患者さんへ喀出を促し残留状態を確認する)

 

 

 咀嚼は、単に食べ物をかみ砕くだけの動作ではなく、頬や舌が協調しながら食塊を移動・形成する動作です。

 咬合支持(噛み合わせ)に問題が無くても食塊を纏める能力がなければ上手く送り込むことができません。

 VFやVEで確認することもできますが、外観評価からある程度の情報を得ることも可能です。

 例えば図1左の図のように顎が回転するような咀嚼の動きをしていれば上手に食べられていることも多いのですが、図1右の図のように単なる上下運動の場合は上手く食べられていないことが多いと考えられます(図1)。

 外観評価は食事の場面に同席したり、動画を用いて確認することが多いです。参考動画を視聴したい方は下記HPの内容をご確認ください。

 https://www.hosp.ncgm.go.jp/s027/202010_guideline_development.html (2022年11月現在)

 

■図1.咀嚼時の外観評価

図1.咀嚼時の外観評価

 

 

経口摂取の観察評価

 

 前述した通り、適切な食形態の決定を行うためにはVFやVEなどの検査結果と臨床的所見を組み合わせることが望ましいですが、VEやVFができない施設もあります。

 

 そのような背景から「嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発」の研究を行い、2020年に研究報告書を提出しました。

 同研究では、ガイドライン開発の参考にするために、一般的に使用されている観察評価項目やスクリーニングテストを調査しましたが、今回の趣旨に合致する評価ツールが確認できず、新たに評価項目を設定する必要があると判断しました。

 その結果、新たに、経口摂取を行っている患者さんの食べる能力を評価するための観察評価項目を設定しました(表1)。

 

■表1.観察評価表

主食・おかず・飲み物など 気になる食形態を評価します。

  観察項目 1 2
 1 口角の左右非対称な運動 □ ある  □ ない 
 2 嚥下(飲み込み) □ 可能  □ 遅延するが可能 
 3 むせ □ むせない  □ むせる 
 4 頸部聴診 □ 異常音無し  □ 異常音あり 
 5  流涎 □ ない  □ ある 
 6 声質の変化 □ ない  □ ある 
 7 呼吸観察 □ 変化なし  □ 浅く速くなる 
 8 口腔内残渣 □ ない  □ 少量ある・ある 
 9 口腔内残渣をうがいで出せるか □ だせる 

 □ うがいで出せない

 □ うがいしても不十分 

 

 

 

口角の左右非対称な運動は、顎と頬でよく咀嚼していることのあらわれで、総合的な口腔機能が高いことの指標になります。

ただし、口角の左右非対称が目立たなくても、咀嚼して送りこめている場合もあります。


嚥下の遅れがある場合、口やのどに食べ物が残っている可能性があるので、飲み込みやすいもの(ゼリーやとろみ茶)をはさみ(交互嚥下)、食事の最後には特にそれを徹底しましょう。


むせは大きくなくても、小さく引っかかるような場合も「むせる」とします。
むせがなくても、4・6・7のどれかがある時は、喉頭侵入や誤嚥の可能性があります。
しかし、3・4・6・7が全くない嚥下障害症例の1割程度に誤嚥がありました。


頸部に聴診器をあてて飲み込みの際の音や、前後の息の音を聞く癖をつけましょう。

切れのいい強い音が良い嚥下音で、長い弱い嚥下音や泡立つような音、喘鳴様の呼吸音などが良くない音です。


流涎は口唇感覚や送り込み能力の低下のあらわれで、唾液や少量のものを嚥下できない可能性を示します。


嚥下の前後に声を出してもらいます。喉頭に残留があるとゼロゼロする湿性嗄声(しっせいさせい)になります。

咳払いまたは交互嚥下で解消できれば誤嚥リスクは減ります。

湿性嗄声について自覚をもってもらい、湿性嗄声が無くなるまで喀出するなどの癖をつけるとよりbetterです。


飲み込みの後に呼吸の乱れがないか評価します。
むせがなくても、4・6・7のどれかがある時は、喉頭侵入や誤嚥の可能性があります。
しかし、3・4・6・7が全くない嚥下障害症例の1割程度に誤嚥がありました。


8・9

口腔内の残渣は残ると誤嚥の原因になるので、ない方が良いし、しっかり出しましょう。
でも実は、咽頭にも残留していることがあります。咽頭の残留は観察評価ではわかりませんし、口腔内残渣とは必ずしも関係しません。
うがいの時にはしっかりのどからも喀出するように励行しましょう。


 

 観察評価表のポイントは、咀嚼に始まり、残渣・残留を吐き出す能力までを一連の動作として確認している点です。

「食後にはうがいで残渣・残留を出しましょう」というメッセージでもあります。

 また、ぶくぶくうがいを行う能力というのは、口唇の閉鎖、口唇と頬の分離運動、頬の運動能力、息こらえの力、喀出能力です。

 ぶくぶくうがいを行うことは、直接的に残渣・残留の排出になると同時に上記の能力を鍛えることになります(図2)。

 

■図2.「ぶくぶくうがい」と「喀出」のチェックポイント

図2.「ぶくぶくうがい」と「喀出」のチェックポイント

 

 

 また、観察評価表を用いて確認を行う際に誤嚥のサインがみられた場合は、臨床的に危険な誤嚥かどうかを医師と相談した上で判断する必要があります。

 例えば、喀出する能力や栄養状態に問題なければ防御機能が高い状態にあると推測できるため、多少の誤嚥があったとしても臨床上問題とならないことが多くあります。

 誤嚥が確認された際はその瞬間の様子だけで判断せず、数日間様子を伺ってから判断することも必要です。また、同時に全身状態・栄養状態を良好に保つことも必要です。

 

 後編では、VFやVEなど機器を用いた検査の様子、観察評価と比較して明らかになった点、嚥下調整食を食べる際のテクニックなどについて述べたいと思います。

 

 

 

参考

 

日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021

https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf(2022年11月現在)

 

国立国際医療研究センター病院

嚥下造影および嚥下内視鏡を用いない食形態判定のためのガイドラインの開発

https://www.hosp.ncgm.go.jp/s027/202010_guideline_development.html(2022年11月現在)

 

 

 

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